MDSはDAコンバーターの性能を良くする技術です。当社独自のMDS技術は古くはディジタル・プロセッサーDC-91(1992年)に搭載されたマルチビットDAコンバーターを多数個並列運転したMMB(Multiple Multi-bit)DAコンバーターに遡り、MDS+、MDS++、MCS、MCS+の原点になっています。
MMB D/A変換方式は、D/Aコンバーターを多数個並列接続することで変換誤差を小さくして、ダイナミックレンジや直線性・高調波歪み率などの特性を改善するものです。
図1にMMB方式のブロック図を示します。各コンバーターには全て同じディジタル信号を入力し、それぞれのコンバーターのアナログ出力を加算して全体の出力とします。
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各コンバーターの出力を全て加算しているので、コンバーターをn個使用したときは全体の出力がn倍になります。しかし、コンバーターが発生する変換誤差は、各コンバーターで発生の仕方が異なるので(お互いに関連がない非相関成分)、単純にn倍になるのではなく√n倍にしかなりません。この時、出力レベルと変換誤差の比をとると1/√nになります。つまり変換誤差が1/√nになるので、ダイナミックレンジ・リニアリティー・高調波歪み率などのD/Aコンバーターにとって重要な特性が改善されます。
例えばDC-91の場合には20ビットのD/Aコンバーターを16個並列動作していますからコンバーターが1個の場合と比較すると変換誤差は0.25(=1/√16)になり極めて20ビットに近い特性を得ることが出来ます。
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MMB方式の大きな特徴は、信号の周波数やレベルに関係なく全ての周波数・全ての信号レベルでその改善効果が得られ、従来のマルチビット型D/Aコンバーターの弱点であった微小レベルのリニアリティーが一挙に改善されています。

図2はD/Aコンバーターの個数による歪み率の違いを測定したもので、並列数が増す毎に特性が改善されていることが分かります。
MDS(Multiple Delta-Sigma)はΔΣ型D/AコンバーターをMMBと同様に、多数個並列運転することにより1個使用に比べて驚異的な性能改善が得られます。最新のMDS +(plus)やMDS++(plus plus)は、アナログになったD/Aコンバーター出力を単純加算ではなく、図3に示すようにD/Aの電流出力の正相、逆相を巧みに加算し、更にアナログ増幅器においても電圧加算部で正相分、逆相分を同様に動作させて、加算を分散・平均化させて、回路の安定度や雑音特性を極限まで追求した構成になっています。
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図4はMDS++のD/Aコンバーターのリニアリティーです。驚異的な直線性(歪みが少なく雑音特性が良いこと)を示しています。
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